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2006年11月 4日 (土曜日)

書籍紹介:「日本核武装」の論点

今日紹介する書籍のテーマは核武装である。同書を読んで記事を書くかと思った矢先のちょうど昨夜、テレビ朝日系列の朝まで生テレビ」の議題は「激論!ニッポンの核武装」。へー、ちょうどよいと思って見てみたら、まあ番組内容の酷いこと。まずパネリストに核武装論者が0。唯一は本書の執筆者の一人、国際政治アナリストの伊藤貫氏だが短時間のインタビュー中継のみ。議論の内容は終始北朝鮮の核の話ばかり、日本核武装の議論など全く出てこない。まあ言うなれば昨夜の朝生は「日本核武装の論点ずらし」である。一点非常に興味深かったのは番組の最後、すなわち毎回番組が行う視聴者アンケートの結果だ。「日本は核を持っていいか」の問いに賛成55%、過半数である。そこまでの現実逃避議論、「シャンシャン朝生」を晒された形になっての一部の出演者の狼狽振り、昨日の朝生は正直最後だけ見れば充分である。
さて、当施設的には核武装についての議論があるは当然と思うが、もっとはっきり言おう。日本は核武装実行を視野に検討に入った方がよい。その根拠を以下に挙げる。多くは本書でも指摘されていることだが、日本人の多くが普段意識して考えない基本的な事柄なので押さえておきたい。

1) 核に対抗する方法
核に対抗する手段は、同じ核を保有することによる抑止以外に有効な手段は現時点存在しない。MD(ミサイル防衛システム)、ニュースで実験に成功したと伝えられるのを聞いたことはあると思う。本書でMDの有効性に疑問を持つ専門家が多いことが指摘されているが、MDで全ての核攻撃を防げるかというと「ほぼ無理」ということである。

2) 米国の核の傘は有効か
米国の核の傘について、今後ますます覇権的になる中国が日本に核攻撃をしたとして、アメリカが日中間の紛争のために自国民数千万人を犠牲にしてまで「日本のために」核の報復をしてくれる、と夢想するのはあまりにも危険すぎる。冷戦時代ならともかく、もはや今の時代「米国の核の傘」はフィクションに過ぎない。

3) 中国の脅威
中国の脅威、中国は近年10数年連続で軍事費2桁%成長という、覇権主義以外に説明のつかない大軍拡を実行している。今後米中間のパワーバランスが中国にシフトしたあと、日本が今と変わらずでいれば中国は核の恫喝一つで日本を容易に屈服させられる。1993年、当時中国の李鵬首相はオーストラリアのポール・キーティング首相と会談した際、「日本?あんな国はあと30年もすればなくなっている」と発言した事実があるが、これは全くの冗談で言っているわけではない。

4) 核不拡散か、パワーバランスによる平和か
広島、長崎以来、核保有国同士による直接の戦争は全く起きていない。そう、抑止力は実際問題機能する。一方、軍事的空白、パワーバランスの崩壊によって戦争が起きるのは軍事の常識である。戦後核を持つ大国が持たぬ国と戦争したり軍事侵攻した例なら数えるだけできりがない。「戦争の起き易さ」という観点で考えて、日本が今後もあまり非核や軍縮に拘るのは東アジアにおいてむしろ不安定要因になる、と捉えるべきである。

「日本核武装」の論点 -国家存立の危機を生き抜く道-
中西輝政 編著  PHP研究所 1500円

目次
第一章 「日本核武装」の議論を始める秋(とき)  中西輝政
第二章 日本という国家の「意志」の表明を  日下公人
第三章 中国核戦略の標的は日本だ  平松茂雄
第四章 国家意思なき外交が招いた惨状と未来への「選択」  櫻井よしこ、平松茂雄、西岡力
第五章 核武装の決断は国民の覚悟から   伊藤貫、兵頭二十八、平松茂雄
第六章 「日本核武装」の具体的スケジュール  兵頭二十八
第七章 自国の防衛に責任を持てる当たり前の国に  伊藤貫

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